« 2012年2月 | トップページ | 2012年4月 »

2012年3月

2012年3月18日 (日)

不便であることがコミュニケーション

塩田千春さんの「私たちの行方」展を観に猪熊弦一郎現代美術館に行った。
会期初日の今日はアーティストトークがあり、作家本人に会うことが出来た。
そのレクチャーの中で印象に残った話を記したいと思う。

2010年に開催された瀬戸内芸術祭での出展作品
「遠い記憶」の制作について話していた時のこと。
この作品は瀬戸内にある豊島という小さな島で制作された。
その島での制作において、スタッフからこんなことをいわれたらしい。
○島の人と出会ったら挨拶をしてください。
○島の人にお金を渡すのはやめてください。
この二つに気をつければ大丈夫ですとのことだった。

例えば制作に使う釘が無くなった時、
船に乗って高松まで買いに行かなければいけない。
港に行くまでにもバスに乗らなければいけない。
でもそのバスや船は一日に数便しか出ていない。
簡単にいってしまえば不便なことだけど、
その不便さの中にコミュニケーションが生まれるといっていた。

普段から挨拶をして町の人と会話をしていれば
困った時に助けになってくれる。
釘が足りなくなってしまった時に、
もしかしたら持ってる釘を分けてくれるかもしれないし
港まで車を走らせてくれるかもしれない。
そんなやり取りが人と人を繋ぎ大切なことを教えてくれるのだ。
便利さから生まれるものでもお金から生まれるものでもない。
人情の中にあるものだ。

都会であれば、欲しいものは何でもすぐに手に入るけれど
大切な何か、人間の本質的なものが欠落している。
それが現代の日本のスタイルだ。

そんな問題提起がこの島の話の中には込められていたように感じた。

| | コメント (0)

2012年3月 3日 (土)

みえるもの/みえないもの

豊田市美術館で開催中の展覧会「みえるもの/みえないもの」を観に行った。

好きな作家がたくさん出展していたのでどれも興味深かったが
中でも一番印象に残ったのは、ソフィ・カルの「盲目の人々」だ。

それは、生まれつき目の見えない人に会い、
「あなたにとって美しいものとは何ですか?」と質問する。
展示は、回答者のポートレートとその答えのテキスト、
さらにその答えをソフィカルがスナップショットで撮影し、
写真にして見せるというものだった。

返ってきた答えは
海。緑。アランドロン。
毛皮。ロダンの彫刻。彼の筋肉。etc…

その中の一人の答えに心が止まった。
「私の家は美しい。全部ひとりで選んで飾りつけました。
 寝室の天井は青にしたいと思いました。くつろいだ、温かい色だから。」

青を温かい色だと答えていたことにショックを受けた。
青は寒色系の色。つまり冷たい色であるはずなのに、
その人にとっては温かい色だった。

美しいものとは何だろう?

盲目の人にとって美しさをはかるものは、
人から聞いた情報や肌で触った感触、
そしてそれらを想像することの中から生まれるイメージ。

美しいものとは人それぞれまったく違うということだ。
また、それは目が見える人にとってもあてはまることではないだろうか。

美しいものとは、目に見えるもの(見ているもの)ではなく
心の中で美しいと認識することから生まれるものなのかも知れない。
想像すること、感じることから生まれるものなのかも知れない。

美とは、カタチのないもの。
つまり概念をビジュアル化しているのだ。

見えるもの/見えないもの

この企画展に、なくてはならない作品だと思う。

| | コメント (0)

« 2012年2月 | トップページ | 2012年4月 »